サイボウズ株式会社

自分の「強み」を持つことがこれからの時代の「安定」──リブセンス 村上太一×サイボウズ 青野慶久

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 経営に興味があるビジネスパーソン
  • ベンチャー企業の経営者や創業者
  • 企業や経営に興味を持つ学生
  • キャリアチェンジを考えている会社員
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、リブセンスの村上太一社長とサイボウズの青野慶久社長が対談し、それぞれの経営哲学、企業展開の戦略、若者へのアドバイスについて詳しく知ることができます。村上社長が25歳で東証一部上場を果たし、"ジョブセンス"というアルバイト求人サイトを成功させた背景についての考え方を学ぶことができます。また、青野社長との対談を通じて、ビジネスにおける独自性の大切さ、"どれくらいの人が使ってくれるか"という視点からビジネスを始める重要性が語られています。

さらに、収益を上げることと社会的な価値提供をどう捉えるか、また海外展開のタイミングや挑戦における姿勢についても話し合われています。特に、"自分の強みを持つこと"がこれからの時代における"安定"につながるという考え方が強調されています。また、日本のビジネス環境に対する洞察も述べられており、変化する社会にどう対応するかについての見解が示されています。この記事を通じて、成功した経営者の思考法や経営モデル、現代のビジネス環境におけるチャレンジ精神の重要性について深い洞察を得られます。

Text AI要約の元文章

自分の「強み」を持つことがこれからの時代の「安定」──リブセンス 村上太一×サイボウズ 青野慶久

「あまり達筆ではないので…」自身のインタビュー本に青野社長からサインを求められ、恐縮そうに苦笑いを浮かべる青年は、いわゆる“ベンチャー社長”像と異なり、ものすごく物腰やわらかでした。 その青年とは、25歳で最年少東証一部上場記録を5年ぶりに塗り替えた株式会社リブセンス村上太一社長。「成功報酬型」「採用祝い金」という画期的な仕組みで躍進するアルバイト求人サイト「ジョブセンス」を立ち上げた、そのひとです。 対談では、村上社長の目指す経営者像、海外への挑戦、世代で異なる豊かさの定義について語られました。

インタビューの場となった、リブセンス社の会議室に現れた青野社長。その手には何やら紙袋が・・中には、26歳の誕生日※を迎えた村上社長へのサプライズプレゼントが。中身は… レッドブル26本!

※村上社長のお誕生日は10月27日。昨年の取材から掲載までだいぶ時間が経ってしまいました。。すみません(編集長大槻)

まるで社長お二人によるレッドブルの広告のような不思議な写真が撮れました。

明日がお誕生日なんですよね。おめでとうございます!

ありがとうございます!これは・・インパクトありますね・・・

これ(レッドブル)で、もっと働いてくださいね(笑)

はい。社員のみんなと分け合います(笑)

村上社長と“おカネ”

いきなりの質問ですが、上場してお金が入ったと思いますが、今なにがほしいですか?

うーん…

あれ、ない?(笑)

マットレスを買いたいですね。

マットレス… あのベッドの… ですか?

とある経営者の方に「マットレスに投資しろ」と言われたんです。もっと熟睡して、睡眠時間を1時間短縮したいなと。そうしてできた時間を仕事に充てたいですね。

村上さんの本を読んで予習してきましたが、ここで書かれているとおり、質素なんですね。

インタビューに向けて村上社長の本を読んで勉強してきた青野社長

質素とか倹約というよりは、単純に興味がないんですよね。例えば、僕の両親もタクシーを嫌うひとで、いまでも時間を短縮するために乗るぐらいでしか利用しないです。きっと、そういう幼い頃に植え付けられた感覚が今でも残っているんですかね。

普通はそういう体験に対して反動がありそうじゃないですか?

うーん… ないんですよね。ごはんだって、安くてもおいしいものはたくさんありますし。

乗らないフェラーリとか買わないんですか?

買う予定はないですね(笑)僕、駐車が苦手なんですよね。

駐車ができないフェラーリ…確かに必要なさそうです…

村上社長と“起業”“経営”

ところで、もともと起業志向はあったんですか?

はい。両祖父が経営者だったので、中学生のころは何となくでしたが、高校生になってからは明確に起業したいと思うようになりました。

高校生というと2000年頃?ちょうどITバブル真っ盛りの時期ですね。

はい。今はリブセンスはITの会社ですが、将来的にはIT以外もやる可能性はあります。

それは意外です。例えばどんなビジネスですか?

世の中になくてはならないビジネスでしょうか。たとえば、宅配便です。そもそも儲からないと言われていた宅配業ですが、ヤマト運輸の小倉昌男さんが米屋で宅配を受け付けてから火がつき、競合では佐川急便やペリカン便と出てくる中、クール便など次々と新しい分野にチャレンジされて大きな事業になりましたよね。僕たちがいま楽天で生鮮食品を買えるのも宅配便のおかげですから。

インフラに近いイメージですね。ビジネスの立ち上げを検討するときは、お金から入るんですか?

いえ、“どれくらいのひとが使ってくれるか”というイメージから入ります。

目標としている経営者はいますか?私は孫さんとかすごいなと思うんですが。

特に誰という目標はいないですね。孫さんには、実際にお会いしたことはありますか?

はい、一度だけありますよ。村上さんは?

いいえ、お会いしたことはないんですよ。

孫さんはすごいですね。一回の打ち合わせの中で、私では思いつかなかったような事業アイデアが4つぐらい生まれました。すぐさま会議室にある電話で社内の誰かを呼び出すと、下の階からひとがやってきて「やりましょう!」となるんです。

すごいですね。孫さんは高校時代から海外に行き、何かを発明しては売却を繰り返してますからね。でも、時価総額2兆円、そのうち借金が1.5兆円というのを知り驚きました(笑)。僕はどちらかというと日本電産の永守さんや、ファーストリテイリングの柳井さんのように、努力しながら着実にやっていくタイプです。

ほんとによく勉強してますね~。

いえいえ。青野さんの目指すところはどこですか?

僕は太陽のような企業が理想なんですよ。太陽って誰からもお金をもらっていなくて儲かってないですけど、すべての人類がその価値を享受していますよね。そんな誰からも必要とされていて、かつほかの誰も作れないものを生み出しているのがいいですね。

太陽のような企業が理想の青野社長

僕もそういうの好きです。でも僕は利益もあげていきたいですね。Facebookのザッカーバーグが言う「利益は投資の源泉」という言葉は自分の中で“これだ!”と強く思いました。

なるほど。「ジョブセンス」の成功の秘訣はなんだと思いますか?

三方良しのビジネスモデルという点だと思います。アルバイト情報サイトで“成功報酬”という目新しさ、ユーザーへの“お祝い金”ですね。でも、東証一部上場はしましたけど、自分たちの影響力がまだ小さいというのは自覚しているんです。やるからには業界で1位を取りたいです。

M&Aとかは考えないんですか?

そうですね、将来的に可能性はゼロではないですが、M&Aをするとほかの会社と同じ攻め方になってしまいます。そしてほかと同じやり方をやってもパワーで負けてしまう。僕が考える“戦略”とは“ほかと違うことをやること”です。

あと、“なにをやらないか”も重要ですよね。既存のサービス以外にはどんな事業をやっていきたいですか?

なにかしらの課題を解決するもの、ですね。僕はそれとは逆に、娯楽系が苦手なんです。

質素なひとは娯楽系、苦手ですね(笑)

そうかもしれないですね(笑)青野さんは娯楽系いかがですか?

僕もダメ。普段、洋服を買いに行ってもどれがいいかとかなかなか選べないですもん。むしろ、“原価いくらかな”とか気になっちゃて(笑)

「娯楽系」が苦手と語る社長お二人

ところで、海外展開は?

日本で勝てないのに海外で勝てるかというとそうではないと思うんです。なので、まずは足場を固めたい。もちろん、海外に展開する可能性はゼロではないですし、海外に行きたくなったときにいつでもアクセルを踏めるようにしておきたいです。それに、いざ“海外でやるぞ!”ってなっても、最初はしかるべきミスをしないといけないでしょうね。青野さんは以前、海外展開されてましたよね?

はい。サイボウズも10年近く前に一度海外で失敗して、2億円ぐらいすりましたけど、あのとき失敗してよかったです。日本の文化やビジネスが受け入れられるのにもタイミングがあると思うんです。そのタイミングが来るまで待つのも大切です。

タイミングと言いますと?

例えば、いまアメリカってプリウスばかり走っていますけど、あれは最初、有名俳優のレオナルド・ディカプリオが映画祭に乗ってきて、そこで“エコ”と“かっこいい”の意味がちょうど合わさった。そういうきっかけがあって文化としてうまく定着したことを考えると、単に自分たちのタイミングで海外進出しさえすれば良いというものではないと思います。

村上社長は社外への発信は控えめ?

FacebookとかTwitterはやらないんですか?

僕、あんまりつぶやかないんですよね。人前に出るのがあまり得意ではないんです。まだ広報からつぶやけというプレッシャーもないので(笑)発信し続けると、それが逆にプレッシャーになるんじゃないかなと。

立場があるひとは気をつけたほうがいいですよ。僕も競合企業に挑発的なことをつぶやいたら、サイボウズ式編集長の大槻に怒られましたもん(笑)

社外に発信して行くのって難しいですよね。発信しすぎると、いろいろありますから…

では、社内への発信は?

社内にはメルマガを書いています。

えらい!

ただ、メールだと一方通行な気がするので、これからはインタラクティブにしていこうと思っています。

ぜひ今回導入頂いたガルーンを活用して下さい。

青野さんは社内に向けて情報発信されてますか?

社内に向けて発信するのは大切ですよ。“うちの社長はこんなこと考えているんだ”と思ってもらえますから。そういう意味で、うちは過去に失敗しましたね。

失敗?

ええ。ひとが一気に増えて、ぐわーっとやめていったんです。そんなことがあってから、例えば“松下幸之助さんの本を読んで、僕はこう思うよ”みたいなことを社内のグループウェアで書き始めました。

サイボウズ社内のグループウェアを説明する青野社長。「青野のひとりごと」という場所を作って、社員に向けた情報発信と、社員とのコミュニケーションの様子を説明

自分の強みを持つことがこれからの時代の「安定」につながる

お互い若い頃に起業して現在に至るわけですが、村上さんは今の若者に対して起業を勧めますか?

そこは価値観だと思うんですよ。でも、“やりたいことがない”というのは避けたほうがいいと思います。

僕の世代は偏差値で大学を選んで、教授に推薦された大企業に入ると“幸せ”と言われていました。でも僕の友達で大手家電メーカーに勤めていた友人なんかは、今では早期退職という名目の強制退職同然の扱いを受けたりしています。

“大企業、公務員は安全”“なにもやりたいことがないから大企業” みたいな風潮は僕らの世代でもありますよ。“おまえ、保険興味ないだろう?”みたいなひとが保険業界の大手企業に入社したり。

そうなんですね。

はい。この前、柳井さんが「現実を視よ」という著書の中で「暑いお湯の中にカエルを入れるとすぐに飛び出す。でも、水の中にカエルを入れてゆっくり茹でてもなかなか飛び出そうとしない。日本はいまそんな状況だ」と書かれていました。それで、“安定”というのは“自分一人で自立できること”なんだなと思いました。

自分の強みを持つことがこれからの時代の「安定」だと語る、村上社長

日本の企業は“アップルみたいな企業が出る、出る”と気づいていたのにずっと何もしませんでしたからね。

日本は島国ですが、これが移民国家だと、みんな共通のバックグランドがないからお互いを信じないところから始まるんです。アメリカの企業は、お互いを信頼しないことを前提に組織を作るのがうまい。もちろん、日本の性善説はいいところでもあるんですが…

それを“いいところ”というのは、村上さんの世代感ですね。

そうかもしれません。よく“いまの20代は挑戦していない”と言われます。“ノマドとか、自分なりの生き方とかそういうのだけで生きていて、社会に対して挑戦していないんじゃないか”とも。そのひとなりの価値観を認める、自分なりの生き方、世界でいいんだというのは、もしかしたら”逃げているのかもしれない。逃げていると言われてもなんとなくわかる”と思ってしまいます。

良い、悪いでいうと?

良い、悪いではまだわからないですね。そこから新しい本流が生まれて、いまの考え方が“古い”生き方みたいになるかもしれませんから。

安易に価値判断を下さないで、その先を見据えているんですね。40歳を過ぎた私でもそこまで達観するのはなかなか難しい(笑)今日は勉強になりました。ありがとうございました。

若さとはうらはらに成熟した考えを持つ村上社長。青野社長はその魅力に引き込まれたようで「今後も応援していきたい」とおっしゃっていました。

写真撮影:comycomo

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