
Episode.32「MREAL S1」

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- 技術開発に関心のある専門職の方々
- 製造業の関係者や経営者
- デジタルトランスフォーメーション推進者
- 先端技術に興味を持つ一般の人々
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この記事を読むことで、読者は「MR(複合現実)」に関する最新技術の発展とその意義について理解を深められます。キヤノンITソリューションズの「MREAL」技術が、いかにして製造業界で注目されるようになったか、その歴史と背景が詳しく説明されています。1997年にキヤノンがMR開発を開始した時は、まだ「未来の技術」と見られ、実用化が進んでいませんでしたが、2016年にVRやARが一般家庭やスマートフォンに普及し始めたことがその認知度を向上させました。
「MREAL」は、現実と仮想を融合するMR技術を実現しており、製造業においてデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を支える大きな力となっています。読者は、「MREAL」システムの現実空間と仮想データを違和感なく融合させる技術の特性についても理解し、それがBtoC市場への技術展開にどう展開され、産業の課題解決にどう寄与するのかを知ることができます。
また、新製品「MREAL S1」の特徴を通じて、技術がどのようにコンパクトで使いやすく進化しているかについても学べます。手のひらに収まるサイズで、どのような業種の人でも手軽に使えるようになったことが強調されており、技術普及の進展についても知識を深められます。
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時代に先駆けて育まれた最先端の技術
キヤノンITソリューションズ(株)エンジニアリングソリューション事業部で「MREAL」の技術企画を担当する八木則明デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が叫ばれる今、特にものづくりの分野で大きな注目を集めているのが「MR(Mixed Reality)」、日本語で「複合現実」と呼ばれる技術だ。
キヤノンは1997年に当時の通商産業省(現・経済産業省)の基盤技術研究促進センターと共同で、「エム・アール・システム研究所」を設立し、MR技術の開発をスタートさせた。その後、研究・開発、そして製品化を進め、活用領域を産業分野向けに広げてきた。
そんなMRと長く向き合ってきたのが、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の八木則明だ。発表当初から企業の課題解決の手段の一つとして、MRの提案を行ってきた。
「キヤノンがMRシステムの『MREAL(エムリアル)』を発表したのは2012年。まだ一般的には、MRという言葉すら知られていませんでしたが、導入した企業からは高い評価を得ていました。というのも、当時から『MREAL』は光学、画像処理、ハードウエア設計、ソフトウエア開発といったキヤノンが持つ高度な技術を生かした、高い完成度を誇る製品だったためです」
しかし、当時のものづくりの現場では、「MRは未来の技術」と捉えられることが多かった。「MREAL」を導入しても現場でどう活用するのか、利用するデジタルデータをどう用意するのかといった部分が追いついていなかったという。
そうした環境に変化が訪れたのが"VR元年"と呼ばれる16年だ。家庭用ゲーム機などで使われる「VR(Virtual Reality:仮想現実)」がブームになり、「AR(Augmented Reality:拡張現実)」技術を取り入れた多様なアプリケーションがスマートフォン向けに登場した。
「VRやARがBtoCの領域で活用されるようになったことや、VR、AR、MRを包括する『xR』という言葉が生まれたことで、社会的な認知も関心も高まりました。そして近年のDX推進の流れが後押しとなり、私たちが提供しているMRシステムの『MREAL』に興味を持ったお客さまからの問い合わせが増えています」
「xR」を構成する技術の特徴
「MREAL」が実現する「MR(複合現実)」は、現実空間とデジタルで作成した仮想空間とを融合させる技術。それに対して「AR(拡張現実)」は、CGでつくったアイコンやキャラクターなどの仮想物体を現実空間に追加(拡張)して表示する技術で、「VR(仮想現実)」は現実空間とは切り離された仮想空間の中に入り込む技術のことを指す。これら技術を包括して「xR」と呼ぶ。MREAL S1 【エムリアル エスワン】
MREAL S1現実空間と仮想のデジタルデータとを違和感なく融合させ、自由な視点から検証できるMRシステム「MREAL」。ヘッドマウントディスプレイをはじめとしたハードウエアと、「MREAL Platform 2021」をはじめとする各種ソフトウエアで構成される。新たに登場した「MREAL S1」は、「いつでも、どこでも、どなたでも」利用できることを目指したエントリーモデルで、ヘッドマウントディスプレイは、手のひらに収まるコンパクトな本体で「MREAL」史上最小最軽量の約137グラムを実現している。
MREAL S1 製品情報
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「MREAL」の活用で進む日本のものづくり革命