経営に近いところで自らを鍛え、世界市場で戦うための企画を立てる存在になりたい。
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Target この記事の主なターゲット
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- 自動車業界のビジネスパーソン
- 企業の経営者や管理職
- マーケティングや企画職に興味がある人
- グローバルビジネスへの関心がある人
- 経営戦略を学ぶ学生
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Point この記事を読んで得られる知識
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この記事を通じて読者は、自動車業界におけるガソリン車、ハイブリッド車、そして電気自動車(EV)のパワーユニット比率予測の重要性について理解することができます。特に、環境規制、とりわけ燃費規制(CAFE規制)がこれらの比率に与える影響が大きいことが述べられています。予測のためには、各国の異なる規制値やガソリン車の燃費改善が電動化の進行にどのように影響を与えるかを分析することが求められます。さらに、プロジェクトを成功させるために、多くの役員や技術者を巻き込んで議論を重ね、予測精度を高めることの重要性が強調されています。
また、中国市場の電動化が劇的に進むこと、そしてそれが企業戦略に大きく影響する可能性があることも理解できます。このような市場の動向を考慮した上で、企業は自社の既存設備や技術をどのように活用して事業再編成を進めるべきか、という点が企業経営にとっての課題となります。著者はこの経験を通じて、自分に足りないスキルを認識し、今後のキャリアを見通す力を養う重要性についても言及しています。
最後に、業界全体の変化に伴い、企業が経営戦略や組織を柔軟に適応させる必要性についても触れられています。異なる文化を持つ企業が経営統合する際には、双方の企業風土や社員の考え方の違いを理解することが共通の目的達成に寄与することも示されています。
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Text AI要約の元文章
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世界市場の動向を1ヶ月半で予測せよ
あれは私が入社5年目を迎える2018年3月のことでした。当時の社長から直々に「ガソリン車とハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)のパワーユニット比率が今後どう推移するのか、世界市場動向の予測を立てて欲しい」との指示が私のいた部署に届きました。これまでガソリン車向け製品を中心に事業を展開してきたアイシン精機およびグループ各社は、加速する電動化に耐えられる企業なのかどうか、それを対外的に示す必要があったからです。タイムリミットは同年4月末日の決算発表の場、時間はわずか1ヶ月半しかありません。私に白羽の矢が立ったのは、前年に担当した中国市場の電動化分析の実績が評価されたからだと思います。
パワーユニット比率は環境規制、とりわけ燃費規制(CAFE規制)に起因すると言われており、完成車メーカーは規制へ対応する為、ガソリン車とHV、EVの燃費を合算し、平均化した数値で規制クリアを目指すことになります。これをどう予測するかですが、複数の要素が複雑に絡み合うため、一筋縄ではいきません。例えば世界各国でクルマの燃費規制値はバラバラです。欧州が最も厳しく、その一方では規制がまったく存在しない地域もあります。ポイントとなったのはガソリン車の燃費改善予測でした。規制の対応は「平均燃費」によって実施されますので、ガソリン車の燃費改善が進めばEV化は少し遅れることになります。
私はメイン担当としてこのプロジェクトを推進する立場でしたが、こうした新しい前提条件の発見や、膨大な情報の分析と取捨選択は一人ではとてもできません。ですので、はじめに私と部長でたたき台をつくった後、それをもとに役員や技術者たちなど多くの人を巻き込みながら議論を重ね、予測精度を高めていくという方法をとりました。
何とか期日に間に合い、決算報告書中の重要項目として大体的に発表されました。2030年までにEV比率が最も高くなるケースから、それほど高まらないケースまで複数の予測シナリオを株主の皆さまに提示した上で「どのケースでも当社は既存設備および技術の転用・応用により電動化への事業再編が出来ると考えている。EVユニットに加え、主力製品であるATをベースにしたHVユニットもラインナップに置くことでクルマ業界の電動化ニーズに応えていきたい」という良い報告ができ、社内からの評価も上々。多くの困難もありましたが、乗り越えた後には大きな自信がつきましたね。
経営に近い場所でグローバルな活躍を
小学生時代をアメリカで過ごしたこともあり、いつの頃からか自然と「就職したらグローバルに活躍したい」という志向をもっていました。それに加え、経営に近いところで影響力の大きい仕事がしたいという想いもありました。入社当初は営業部にいたのですが、今のパワートレイン事業の企画などを行う部署に移る際にまったく迷わなかったのは、より経営に近い場所で仕事ができると踏んだからです。
先ほどのプロジェクトを経て、これから最もドラスティックに変わるのが中国市場だということを知りました。市場の伸びしろも大きく、政府が推進しているため電動化のスピードも速い。劇的に環境が変わる地域だからこそ、そこで立てる戦略や企画がものすごく大事だと感じたんです。
これからの中国市場は面白い、と強く惹かれた当時の私は「現地に赴任して経営を左右するようなパワートレイン事業企画に携わりたい」という想いを強めます。しかしその一方で市場や顧客の動向など外的要因と、拠点事業や商品事業など内的要因を踏まえ、数年後、数十年後のあるべき姿を描くのは相当なスキルや協業部署との連携が必要なことも同時に痛感していました。
入社時の「海外で」「経営の近くで」は、漠然とした憧れやイメージでしかありませんでした。さまざまな経験を通じて目標達成に至るまでの道のりの険しさと、自分に足りない部分がくっきり見えてきたんですね。だからまずは力を蓄えるために、本社でひとつひとつの仕事に向き合っていこうと決めました。今は自分のキャリアを見通す力もだいぶついたように感じます。
統合後のアイシンを牽引する存在に
今回のプロジェクトを通じ、社長をはじめとした多くの経営陣と接することで、考え方が大きく変わりました。私は日々担当顧客のことを考えるだけで精一杯といった感じでしたが、皆、数十年先を見据え、世界規模で目の前のビジネスを捉えているのです。自分の狭い世界とのギャップに驚き、本来、自動車ビジネスに携わる者はこうあるべきだと思いました。
CASEの進展も含め、国や地域によって自動車市場の伸び方・変わり方が異なることも知りました。複雑で予測困難な未来に対し、今ある人的資源や設備などのリソーセスと商品を踏まえて、どのように事業構造を変えていくのか。指針を立てる者の果たす役割の大きさ、重要性も改めて知ることができました。1日も早く必要なスキルと多くの人たちを引っ張っていく力を身につけ、パワートレイン事業の将来戦略・経営企画の立案に関わっていきたいですね。
自動車業界全体の構造が大きく変わる中、やはりその動きに合わせて、企業の組織も柔軟に変えていかなくてはならないのではないか。そう感じていた矢先の経営統合のニュースでしたから、お互いのいいところを吸収しつつ、新しく生まれ変わるチャンスだと感じています。私が現在所属する部署は、統合前からアイシン精機とアイシン・エィ・ダブリュの社員同士による協働を行ってきました。だから2社の企業風土の違い、それぞれの社員の考え方の違いなども知っています。同じ世代で、私と同じような経験をしている社員はほとんどいないと思います。経営統合で異なる文化を持つ会社がひとつになるとき、両社を知り、広い視野で事業を捉えることができる私の力がきっと役に立つはずです。