サイボウズ株式会社

お金儲けをするなら、メディアはやらない──森川亮から土屋敏男さんへ

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • メディア産業に興味がある人
  • テレビ業界の関係者
  • デジタルコンテンツプロデューサー
  • スタートアップに関心がある人
  • マーケティング専門家
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、メディア産業におけるビジネスモデルの変遷とその背景について理解を深めることができる。特に森川亮さんがLINEを退任した後にC CHANNELを立ち上げた背景を通じて、メディアがもともとビジネスではなく、社会的意義が重視されてきたこと、そしてその中でのビジネスモデルの変化に焦点が当たっている。メディア業界では、視聴率やデジタル化の進展により、数字に追われる状況が続いているが、そこには限界があることが指摘される。また、メディアが本来持つべき役割と、ビジネスとしての成功を両立させる難しさについても言及されており、これに対するクリエイティビティの必要性が強調されている。ナラティブの中で、AIやアルゴリズムによる成功パターンの探求と、その限界についての議論も展開される。このようなコンテンツを通じて、メディアが儲かるビジネスであるとの誤解や、今後のメディアの可能性について考える材料を提供している。メディアの未来として、スマートフォンによる個人のジャーナリズム活動の可能性にも触れられており、今後のメディアの在り方や新しいプラットフォームの可能性に関心を持っている人にとっても有益な情報となっている。最後に、土屋敏男さんの視点から、ネットがテレビに与える影響についても考えるきっかけとなる。

Text AI要約の元文章

お金儲けをするなら、メディアはやらない──森川亮から土屋敏男さんへ

C Channel代表取締役社長の森川亮さん。LINE株式会社の代表取締役社長を退任後、すぐに立ち上げたのが、女子のための動画ファッションマガジン「C CHANNEL」だった。テレビ、メッセージアプリ、そしてスマホ時代のメディア……いま、森川さんはメディアで何をやろうとしているのか?

サイボウズ式×現代ビジネス「ぼくらのメディアはどこにある?」で、森川さんとメディアについての往復書簡を交わすのは、日本テレビ放送網編成局ゼネラルプロデューサーの土屋敏男さん。「メディアのこれからって、どうなるんですか?」

2016年1月14日メディアの未来は「思いきり広い or 狭い」の二者択一、どちらを選ぶ?──森川亮から土屋敏男さんへ

ミキサー志望でテレビ局へ、でも配属はエンジニア

ぼくは土屋さんとちょうど10歳違います。入社は平成元年、まさにバブル入社でした。日本がまだ元気だったときにギリギリ滑り込んだという感じです。同期は40人。ちょうどぼくの2つ下がいちばん多くて60人くらいでした。そこからバブルがはじけて減っていったのですが……。

ぼくらの世代の前後は、テレビ番組と研修が一緒になっていたことを思い出します。たとえば、ぼくの入社年には、欽ちゃんの仮装大賞に出ることが研修でした。ほかの年には、無人島で暮らすとか富士山までマラソンとか、研修としてそういう番組に出ていました。

思い返すと、ぼくが入社したときは、日テレの数字(視聴率)があまりよくない時代でした。たしか3番目くらいで、フジテレビが圧倒的によかったころです。

そもそもテレビ局に入ったのは、ミキサーがやりたかったからです。しかし、配属はコンピューターシステム部門でした。そこで6年間エンジニアとして働き、報道のデジタル化や視聴率の分析に関わりました。

その後、ITが普及したタイミングで、新規事業を6年ほど経験。ネットの黎明期には、番組ホームページを立ち上げていきました。

データが多すぎるとおもしろい企画が生まれない


C Channel代表取締役社長の森川亮さん。日テレ、ソニーを経てハンゲームジャパンに入社(のちのLINE)、2007年10月~2015年3月までLINE株式会社の代表取締役社長を務めた。退任後すぐに立ち上げたのが、女子のための動画ファッションマガジン「C CHANNEL」だった


もちろん、そのなかには土屋さんが担当する番組のページもあり、『電波少年』も『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』もどちらもすごかったのを覚えています。ネット活用でいえば、マラソンのゴールの瞬間をリアルタイムでブログにアップするなど、少しずつ新しいことをはじめていた時期だったでしょうか。

ただ、ネットによる弊害もあったと思います。ぼくは日テレ時代に視聴率の仕組みづくりを担当していたことがあるのですが、毎分視聴率を確認できるようになってから、真面目なディレクターは他局の視聴率を観ながらCMの時間を決めて、じわじわと数字を上げていくのが正攻法になりました。

すると、おもしろい企画が出にくくなりました。これはいまのソーシャルゲームの現状とも似ていますが、じわじわと数字を上げてとりあえず下がらないようにすれば、ある程度の規模が維持していくからです。でも、それでは大きなものにはなりづらいと思います。

メディアはもともとビジネスではなかった

メディアに関して多くの人が勘違いしていることがあります。それはメディアがもともとビジネスではなかったのではないかということです。昔はビジネスという言葉自体なかったですから。

でもいまでは、「ビジネスモデル」のような言葉が出てきて、資金調達などがセットで語られるようになっています。数字中心の世界になってくるのです。

そうなると、ネット時代のビジネスには、成功モデルをコピーしてセットアップしたほうがコスト抑えられる、という考え方が跋扈(ばっこ)してしまっています。最近ではいいコンテンツをつくらないといけないという機運が高まっているように思いますが、その一方で会社として成り立つにはビジネスを確立する必要があります。

いまは日本のどの業界でも、社長は目先の数字を取らないといけないですから、とりあえずうまくいっているものを採用してなんとかやっている現状があります。でも、そもそもメディアというのは本質的には真面目にやると儲けづらいものです。儲けたいなら、金融など別のことをやればいい。

「メディア=儲かる」と思っている人が多くいる現状


森川亮さんとメディアについて語る土屋敏男さん。『電波少年シリーズ』『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』の演出・プロデュースを担当した、日本テレビ放送網編成局ゼネラルプロデューサー。2005年にはインターネット動画配信サービスとして第2日本テレビを立ち上げ、現在はそれぞれの人生をドキュメンタリーとして残す事業を展開するLIFE VIDEO代表取締役社長も務める

でも、なぜか「メディア=儲かる」と思っている人が多くいます。

メディアは社会的に意義があれば儲ける必要はありません。儲けすぎるとタブロイドみたいに刺激的になってしまいます。メディアが儲からないというのは、アーティストの人は食っていけない、と言われるのと一緒です。アートは芸術なので、もともと食っていく職業ではなかったですから、表現する段階でお金のことを考えている人はほとんどいないと思います。

ところで最近、AIの研究をしているのですが、AIの延長線上にはアルゴリズムがあります。賢いアルゴリズムは、過去の成功のなかでいちばんの成功パターンをアウトプットできますが、未来の成功パターンにはなりにくい。だから新しいものが生まれる背景には、「これがおもしろい」というものを突き詰め ていく、土屋さんのようなクレイジーな人がいるのです。

そういう人を生むために、メディア企業が給料を減らすことさえもアリだと思っています。安い給料でも働きたいクレイジーな人を中心にメディアをつくると、またなにかおもしろいものが生まれる気がします。

お金儲けするなら、もっと別のビジネスをやっています

ぼくがC CHANNELでやりたいのは、海外でいえばCNNとMTVのようなことです。MTVがミュージックビデオで新しい音楽の世界をつくったように、CNNが ニュースを一般化したように、C CHANNELではスマホで動画を撮影・編集・公開するジャーナリストが世界中にいて、ファッション情報を発信する新しいプラットフォームが実現できると 思っています。

それでも、5月に開催したC CHANNELの発表会では、「マネタイズはどうするんですか?」「エグジットはどうするんですか?」と聞かれてしまって……。お金儲けするなら、もっと別のビジネスをやっています。でも社会的意義を考え、世の中が変わるようなことをやらないと、なにかのコピーばかりがあふれてしまう。

映画の次に出てきたメディアであるテレビの新しさは生放送にありました。世界の瞬間をお茶の間で観ることができるようになったことが大きな変化です。それを現代に置き換えると、だれもがスマホで撮影、編集、発信するジャーナリストになることができる。それがいまの世の中の変化なのです。

ぼくはメディアづくりには、思いが大事だと思っています。ビジネスも大事ですが、それを超える思いがないと続かないし、共感もしにくい

土屋さんには、ネットはいったいテレビになにをもたらしたのかを聞いてみたいです。

土屋敏男さんからのメッセージ。「ネット最大の弱点は「数字が出すぎること」──土屋敏男から森川亮さんへ

取材:徳瑠里香、佐藤慶一(現代ビジネス)、藤村能光/文:佐藤慶一/写真:岩本良介


2015年8月 6日[往復書簡] 田原総一朗から津田大介さんへ。これからのジャーナリズムの居場所はどこにある?

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